これからこそ放射線による健康被害に向き合う―西尾正道先生の熱い講演@一橋大

2014年7月23日 17時24分 | カテゴリー: 活動報告

 

 

300人教室がいっぱいに。右に立つのは林ゼミの協力団体「市民のためのがん治療の会」の會田さん。この日の講演には、市内外16の市民団体が賛同し、西尾先生を迎えた。

 今月開かれた環境省「福島原発事故後の健康支援を議論する専門家会議」では、座長(長滝重信・元放射線影響研究所理事長)を初めとして、国による健康調査・検診に後ろ向きな判断を出しています。同じ長滝氏が議長役を務めた内閣府の有識者会議「低線量被曝のリスク管理に関するワーキンググループ」も、2011年末の段階ですでに、「発がんリスクの増加は100ミリシーベルト以下の被ばくでは他の要因の影響に隠れるほど小さく、明らかな増加の証明は難しい」と断じていましたが、3年経ってさらに、科学の名を借りて、健康診断の拡充や医療費軽減を否定するような発言を強めてきていることは、私たちは看過できません。
 この長滝重信氏が属していた放射線影響研究所の前進は、「治療はせず、原爆の効果を調査」した米国の原爆調査委員会(ABCC)。原爆の安全神話を広めることに寄与し、さらに、今は、健康被害を隠すように安心神話を流布し続けています。このような流れの人を、政府は各専門家や有識者会議のトップに置いているわけです。この事実からも福島原発事故を国がどのように収束させようとしているか明白になってきています。

 

 そのような中で、先日12日、一橋大学社会学部・林大樹ゼミ「人間環境論」が公開講座として、放射線専門医として福島の市民に寄り添い続けてきた北海道がんセンター名誉院長・西尾正道先生を招いて講演会を開催。300人教室は溢れるほどいっぱいになったことからも、タイトルにあった「放射線による健康被害」の問題に、いかに多くの人が関心を寄せ続けているかがわかりました。2時間半にも及ぶ講演内容は次のとおりでした。

・IAEA、ICRP等の見解を根拠にした日本政府の放射能情報  の問題
・100ミリ以下安全説の虚妄
・内部被ばく検査の体制をつくる緊急性
・憂慮すべき海洋汚染の今とこれから
・チェルノブイリより4倍も高い福島の避難基準の問題
・事故後、鼻血を出した子どもは多かった事実
・TPPによる農薬や遺伝子組み換え食品の危険性

 西尾先生の2時間半に及んだ講演は、政府の都合の良い内容だけを非科学的に国民に伝えることに対する怒りに満ち満ちたメッセージの強い講演でした。聴衆が長い講演を聞き入ったのも、きっと、西尾先生が放射線がん治療の専門であることとともに、チェルノブイリへの重ねての視察、それにいわき市で「放射能市民測定室たらちね」→ http://www.iwakisokuteishitu.com/koujyou.html での甲状腺検査を続けている臨床医としての信頼があるからだと思います。政府が、環境省と福島県にだけ任せている健康調査の問題とウソだらけの放射能検査を、先生は、徹底して本人本位のものにすべきと提言し続け、放射線測定整備の充実、被ばく画像等の資料は、今後50年間保管義務とすべきなどの要請を続けています。そして、21世紀は、放射線と化学物質と向き合う時代であると力説されました。
 西尾先生は、最後に、環太平洋連携協定(TPP)に関して、EUは、健康被害として疑わしきは調査する立場に徹して、科学者と市民との協働作業により、国に遺伝子組み換え作物の審査と承認を先送りさせている事実を紹介して、私たちを深く勇気付けてくれました。

 私も加入している生活クラブ生協は、40案件目となる「遺伝子組み換え作物」承認に対して、理由を伏して、絶対に容認できないとの意見を送り続けていますが、国内においては、TPP反対の声は弱まり、ヨーロッパほどに世論として盛り上がらないことに悲しさと憤りを、私は感じています。長寿やアンチエイジング等の宣伝にばかり呑み込まれ、命の源への執着や権利意識が薄くては元も子もありません!!
※生活クラブ生協が提出したパブコメ全文を、ぜひ、ご覧ください。→
http://tokyo.seikatsuclub.coop/news/2014/06/140626pubcom.html#phonbun 

 しかし、西尾先生のように市民に学習の場を開き、子どもたちの健康被害に真摯に寄り添う医師がいるのですから、やっぱり私たちは諦めない。希望は失わない。賛同団体の皆さん、参加者の皆さんとともに、そう強く共感しあった一日となりました。