学校と警察との相互連絡制度の心配な点

2011年2月4日 14時15分 | カテゴリー: くにたちの教育・生涯学習

1/31個人情報審議会の答申は「不可」

 2003年、東京都教育委員会は、「児童・生徒の健全育成に関する警察と学校との相互連絡制度の協定書」締結を提起しました。その意図は、第一に、警察から学校が情報提供を受けることで、学校において、犯罪の再発防止、犯罪に関与した児童・生徒の規範意識の醸成及び立ち直りなどについて、迅速かつ効果的指導をおこなう、第二に、学校から警察への連絡により、警察は、問題行動の情報に止まらず、児童虐待事案、また児童・生徒が被害者となる事案を警察が早期に把握することが可能となる、としています。
 しかしながら、協定を結ぶに当たっては、子どもや家庭の個人情報の取り扱いに大きく関わることであり、国立市教育委員会としては、「国立市情報公開及び個人情報保護審議会」に、次の5点を諮問し、専門的見地からの意見を求めてきました。

①小中学校が、在籍児童・生徒に関して、逮捕事案やぐ犯少年事案のように、進学または就職に際し不利益を被る一因となるおそれがある情報、いわゆるセンシティブ情報を取り扱うことについて
②小中学校が、警察からの連絡により、在籍児童・生徒に係る個人情報を本人以外から収集することについて
③その場合、本人以外から収集した個人情報について、一定の場合、収集した旨及びその収集目的を本人に通知しないことについて
④小中学校が、在籍する児童・生徒に係る個人情報を警察に提供することについて
⑤警察に情報を提供したことについて、一定の場合、提供した旨及びその提供目的を本人に通知しないことについて

 審議会では回を重ねて、5人の有識者が熱心に議論を重ねてきました。
 そこでの基本的な考え方は、本件が、あくまで児童・生徒の個人情報にかかわることであり、子どもたちの権利利益の保護、また警察から入った情報の秘密の保持といった観点だけでなく、それを知った本人以外の人に偏見や差別をもたらしやすい性質の個人情報であるといった立場に徹したものでした。私も傍聴を続けてきましたが、各審議委員さんの発言に学ぶところが多く、問題はそう簡単なものでないとの認識に立つようになりました。

 諮問内容に対する審議会での主な論点をまとめてみました。
●協定書には当該児童・生徒に不利益な措置や対応がおこなわれることのないよう必要な対策を図るとはあるが、必要な対策が必ずしも明らかでないこと。
●事実関係の調査が学校内で行われる場合、その調査が“第三者性”に欠け、学校長の裁量的判断に任される場合が多く、この場合でも、不利益を被ったとされる児童・生徒の意見表明等の権利保障、不利益からの救済などの具体的な措置が明らかにされていないので、救済が困難とおもわれる。

 結果として、個人情報保護審議会は、1月31日、学校と警察との相互協定によるセンシティブ情報の取り扱いは認めることができない、「不可」との結論による答申を教育委員会に戻しています。

 昨月の教育委員会・定例会には、本事案に関し、9本もの要望書が保護者から出され、すべてが、学校と警察との相互協定を結ばないで欲しいという内容の要望書でした。学校に対して、あくまでも、警察とは異なる学校としての教育的観点からのていねいな指導を子どもたちに望むとの声であり、地域や保護者としてもできる限りのことはする、子どもの個人情報を本人に伝えることなく、学校内で調査したり、それを警察に伝える環境を学校内につくらないで欲しい、という切なる願いが訴えられていました。

 今後、国立市教育委員会としては、個人情報保護審議会からの「不可」、締結の必要なし、との答申結果を重んじ、2月の定例会で同様の結論に至ることが必要だと思います。
 これからも、子ども・保護者と教員との信頼関係を基本に、万引きや非行に止まらず、虐待やいじめなど、福祉的な面からも子どもを見守る既存のネットワークを改めて見直す良い機会にすることが、地域として、いま、求められていることと私は考えています。